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麻酔管理
安全かつ高度な麻酔管理

当院では、術前の診察・検査から術後の管理まで動物の性格・年齢・状態を考慮した方法で行なっており、少しでも飼い主様の不安・動物への負担を解消できるよう努めております。
「痛そう」・「もう高齢だから麻酔をかけるのは不安だ。」・「麻酔をかけたことによって体調が悪くなるのではないか。」とお考えの飼い主様は大勢いらっしゃると思います。
当院では安全性を重視し、かつ痛みの程度に合わせた麻酔を使用しており、動物にできる限り負担がかからないような麻酔方法を動物の状態に合わせて計画します。
高齢であっても、現在の身体の状態を把握し、想定されるリスクに合わせた麻酔管理・術後管理を徹底して行います。
麻酔をかけることは100%安全ではありません。しかし当院では、そのリスクを軽減するための設備・技術・知識を兼ね備えております。速やかに覚醒し、その後の痛みも軽減できるよう、そして1日でも早く快適な生活に戻れるように努力致します。
麻酔をかける前から術後の管理まで、詳しく説明していきます。
麻酔をかける前に
手術前に身体検査を行い、体の状態を確認します。その上で、年齢・基礎疾患・処置の対象部位等を考慮して、「血液検査(血球・生化学検査)」「X線検査」「超音波検査」「血液凝固機能検査」等から必要な検査を行います。検査結果をもとに治療を行う上で麻酔をかけても問題がないかを確認し、治療方法と当日に使用する麻酔薬等を決定します。
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X線検査(レントゲン検査)
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超音波検査
術前の血液検査で主に使用する機械
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自動血球計算装置(IDEXX:プロサイトDx)
血液中の細胞を調べる機器です。貧血・脱水の程度や、炎症・感染がないか、止血機能の異常がないか等を調べます。 -
血液生化学検査器(IDEXX:カタリストOne)
血液中に含まれる様々な成分を分析します。臓器ごとに検査項目が異なります。 -
血球凝固分析装置(COAG2NV)
血小板数のみではわからない血液凝固異常を調べる検査機器です。 -
免疫反応測定装置(富士ドライケム:IMMUNO AU10V)
甲状腺機能(T4・TSH),副腎皮質機能(COR),肝臓機能(TBA),血清アミロイドA(SAA)の測定が可能です。当院では、血清アミロイドA(SAA)の測定に活用しております。
*血清アミロイドA(SAA):猫の炎症マーカーとなる項目です。身体のどこかに炎症がある場合に数値が上昇します。
麻酔について
麻酔には「全身麻酔」と「局所麻酔」があります。
局所麻酔は手術する部位に注射し、その部分の痛みを取り除きます。比較的小さな手術の時や簡単な縫合時に行われ、意識も残っている状態です。また、全身麻酔と併用する場合もあり、術部の領域の神経を一時的に遮断して痛みをコントロールする「神経ブロック」や、主に整形外科手術で行われる、脊椎を覆っている硬膜に注射する「硬膜外麻酔」などの局所麻酔の方法があります。
局所麻酔薬
硬膜外麻酔針
全身麻酔は、「鎮静」「鎮痛」「筋弛緩」という3つの要素があります。しかし一つの薬剤ではその全てを満たすことが出来ないため、当院では複数の薬剤を組み合わせて行う「バランス麻酔」を取り入れています。また、手術時の維持麻酔として吸入麻酔を行います。気管に管を入れて吸気中から麻酔をかけ、麻酔深度を調節することが可能です。
麻酔をかけるにあたって、100%安全だと断言することはできません。しかし、手術前の検査・各動物に合わせた麻酔を使用することで、基礎疾患がある動物・高齢な動物であっても安全性の高い麻酔をかける事が可能です。
TOFウォッチ(筋弛緩モニタリング装置)
麻酔時の筋弛緩薬の効果を判断するための電気刺激装置です。
麻酔薬
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気管に管を入れている様子
体の大きさによって使用する太さが異なります。 -
気管チューブ
歯科治療の際は柔軟性のある螺旋チューブを使用する場合もあります。
鎮痛について
麻酔管理において痛みを和らげることはとても重要になります。麻酔をより安全に、よりよい状態で維持する上では鎮痛薬が欠かせません。鎮痛薬にも様々な種類があり、痛みの程度に合わせた鎮痛薬を使用します。
鎮痛薬
当院では、麻薬性の鎮痛・鎮静薬を使用した麻酔管理も行います。適切に使用することで、強い鎮痛・鎮静作用が得られます。そのため、強い痛みを伴う処置には麻薬性の薬剤を使用するケースが多いです。
*当院の獣医師は麻薬管理者、麻薬施用者の資格を取得しております。また、院長は獣医麻酔外科学会主催の高度麻酔科研修(麻酔ブートキャンプ)の実習も終了しており、動物にとってより安全で優しい、ハイレベルな麻酔の管理を実践しております。
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麻薬性麻酔薬
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麻薬性鎮痛薬
麻酔下での管理
麻酔を安全に導入・維持・覚醒するためにはモニタリングが欠かせません。麻酔中は「生体モニタ」という機械を使用し血圧、心拍、呼吸等を測定します。そして麻酔係が常にモニタリングし、異常があればそれに合わせた対処を行います。
心電図(HR):①
心臓が正常に動いているか表示されます。心拍数や不整脈の有無を確認します。
- 不整脈:心拍が不規則でリズムの異常のことをいいます。
カプノグラム :②
呼気中の二酸化炭素分圧の変化が波形として表示されます。気道に閉塞がある時や、麻酔回路に異常がある時に異常波形が表示されます。
酸素飽和度(SPO2):➂
生体が十分な酸素で満たされているか表しています。気道や肺に異常があり換気が悪い時等に異常を表示します。
血圧:④
血圧とは、心臓から血液が巡る際に血管壁にかかる圧力のことです。心機能の異変や全身の血液量の異常を察知することができます。血圧の測定方法は非観血的血圧測定と観血的血圧測定の2通りあります。主に非観血的血圧測定を行なっております。
非観血的血圧測定 | 腕などにカフを巻いて血圧を測定する方法 メリット:簡単に血圧測定が可能 デメリット:装着の具合により数値が変動するため、正確さに欠ける |
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観血的血圧測定 | 動脈にカテーテル等を刺して測定する方法 メリット:非観血的より正確に測定が可能 デメリット:動脈にカテーテルなどを刺さなければいけないため、動物にも負担がかかる |
最高血圧(SYS)・最低血圧(DIA)・平均血圧(MAP)が5分間隔で測定されます。吸入麻酔をかけることによって、血圧低下を引き起こします。そのため静脈から点滴を流し、血圧の管理を行います。写真の症例は低血圧なため、昇圧剤をこの後注射しております。
- 点滴は様々な目的で行います。
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血管確保
点滴や必要な薬剤の投与のため静脈にカテーテルを入れます。 -
輸液ポンプ・シリンジポンプ
手術によっては、複数を併用する場合があります。
当院で使用する麻酔器
当院では人工呼吸器が備わっている、人体用の麻酔器3台と人工呼吸器が4台完備しております。その為、より高度で精密な麻酔管理を行うことが可能です。酸素濃度や麻酔濃度、呼吸数等を細かく設定することが可能で、呼吸回路に異常があればアラームで知らせてくれる為即座に対応が可能です。
覚醒後の管理
手術が終わった後も油断はできません。吸入麻酔を切った後でもモニタリングは継続し、問題なく覚醒できているかを常に人がそばにいて確認します。覚醒後はICU(集中治療室)に入れて温度、湿度、酸素濃度を調整し管理します。問題なく覚醒したとしても定期的に動物の様子をチェックし、異常がないか確認します。
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麻酔器(Drager:Apollo)
人工呼吸機能が備わっており、最新の換気機能・モニタリングを高精度で行うことが可能です。 -
麻酔器(Drager:Fabius plus)
人工呼吸機能が備わっており、高性能の換気、また、安全機能が強化されています。 -
動物用人口呼吸器(Compos X)
モニタ機能を搭載しており、動物の呼吸状態を把握できます。自発呼吸の補助呼吸から人工呼吸まで柔軟に対応することが可能です。CT撮影で主に使用します。 -
人工呼吸器(BIRD:MARK7)
古い機械ですが、欧米をはじめ日本でも広く使われてきた名機です。未だ現役で電源がなくても使用可能です。 -
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優れた空調システムで、温度・除湿レベル・酸素濃度を細かく設定することができます。
手術当日のお願い
- 手術当日の朝は絶食・絶水でお願いいたします。胃内に水・食べ物が入った状態で麻酔をかけてしまうと、嘔吐してしまう可能性があるので大変危険です。ご協力お願いします。
- 写真は飼い主様の許可を得て、掲載しております。